もしもの事故から、大切なお子様を守るためのチャイルドシート。
【安全性】は何よりも一番重視したいところ。
販売されているチャイルドシートは、全て安全基準に合格しており、最低限の安全性は認められているわけですが、安全基準をクリアした製品の安全性は同じではありません。
安全基準をギリギリクリアーした製品もあれば、余裕でクリアした製品もあるわけで。
安全基準は「合格か不合格か」を判定するためのものです。
一方、今回紹介するテストは「どの程度安全なのか」を比較するためのものです。
安全基準よりも厳しい条件で衝突試験を行い、認定・評価するテストなので、より安全なものをお探しの方は、その評価の内容を参考にするといいでしょう。
当方は、より厳しい安全テストで評価されているものを基本お勧めしておりますが、
「海外ブランドよりも日本のブランドを選びたい」
という方もいらっしゃるかと思いますので、そのあたりも盛り込んだ内容にしております。

Swedish Plusテスト
(スウェーデン・プラス試験(VTIテスト))
チャイルドシートの衝突試験において「世界一過酷」とも言われるテスト。
このテストは、スウェーデン国立道路交通研究所(VTI)が政府交通局などと共同で実施している、後ろ向き(対面式)チャイルドシート専用の任意(自主的)の衝突試験です。
通常のヨーロッパ基準(UN R129など)を遥かに超える厳しさで合格することが最も困難なチャイルドシートテストとして知られており、その具体的な試験内容と特徴は以下の3点に集約されます。
最大の特徴:子どもの「頸部(首)にかかる負荷」の測定
一般的な国や地域の安全基準試験(日本のチャイルドシートアセスメントや欧州のR129など)では、衝突時の頭部や胸部の加速度を測るのが一般的で、実は「首にかかる力(ネックロード)」の明確な合格限界値は設定されていません。
しかし、プラス試験ではダミー人形の首に高性能センサーを装着し、首にかかる引張力を厳格に測定します。
3歳児のダミーの場合、首にかかる力が122kg(1220ニュートン)を超えた時点で即不合格となります(この数値を超えると頸椎の脱臼など致命的な怪我に直結するため)。
圧倒的に過酷な「衝撃パルス(ブレーキ力)」
衝突スピード自体は約56km/hと、一般的な基準(約50km/h)と比べて極端に速いわけではありません。しかし、大きく異なるのは「制動距離(ブレーキがかかって止まるまでの距離)の短さ」です。
非常に強く、一瞬でガツンと止まるクラッシュ(強い減速G)を再現しているため、チャイルドシート本体と子どもの体に加わるエネルギーの激しさは他の試験の比ではありません。

合格できるのは「後ろ向き専用シート」のみ
衝突時、前向きのシートでは頭だけが前方に激しく投げ出されるため、未発達な子どもの首には耐えられないほどの負荷がかかる可能性があります。
一方、後ろ向きシートであれば、背もたれ全体で衝撃を受け止めて分散できるため、首への負荷を激減させることができます。
この科学的根拠に基づき、プラス試験は「後ろ向きシート(最大身長105cmまたは125cmまで対応するもの)」しか受託・認証していません。(過去に前向きシートがテストされたこともありますが、一台も合格できませんでした)。
※2023年の改定で、正式に対象が後ろ向き専用のみに規定されました。
まとめ
「時速56km/hから一瞬で急停止する激しい正面衝突を起こし、その際、赤ちゃんの首にかかる力が致命的なレベル(122kg以下など)に抑えられているか」を証明するテストです。
自動車における衝突方向の発生率とその死亡率において、圧倒的に高い前方衝突 (発生率59%、死亡率67%)に重点を置いたテストとなっています。

このため、ヨーロッパや北欧では
「Plus Testのラベルがついているシート」=「正面衝突時に子どもの首へかかる負荷を極めて低く抑えられること」を示す、世界的に権威の高い認証となっています。
日本で購入可能なSwedish Plusテスト合格製品
・AXKID One+3(新生児~7歳頃)
・AXKID Spinkid2(新生児~4歳頃)
2. ドイツ・ADACテスト
「時速64kmの超高速衝突と有害物質まで暴く、欧州最高峰の総合通信簿」
ADACのテストは、ヨーロッパの公的基準(UN R129など)よりも試験条件が厳しく、評価項目が多岐にわたるため、欧州では最も影響力の大きいチャイルドシート評価試験のひとつとなっています。
具体的には、以下の4つの柱(計約30のチェック項目)
でチャイルドシートを総合的に評価し、ポイント制(点数が低いほど高評価)で5段階のランク付けを行います。
※5段階評価
- 非常に良い
- 良い
- 満足
- 十分
- 不十分
安全性(Safety)—— 配点の 50%
公的な安全基準(R129)を遥かに超える過酷な条件で衝突試験を行います。
前面衝突(正面衝突)テスト
公的基準(約50km/h)よりも速い時速64km/hで衝突させます。
これは自動車の安全性をテストする「Euro NCAP」と同じ速度であり、実際の重大事故を想定した非常に激しい衝撃です。
側面衝突テスト
時速50km/hで、ドアが押し寄せてくるようなリアルな横方向からの衝撃を再現します。
その他
シートベルトの通しやすさや、シートが座席にどれだけ強固に安定して固定されるかも、安全性の項目で評価されます。
操作性・取り付けやすさ(Handling)—— 配点の 40%
「どんなに安全なシートでも、取り付けや使い方を間違えたら意味がない」という思想に基づき、誤使用(ミスユース)のリスクを徹底的に調べます。
誤操作のリスク
説明書が分かりやすいか、直感的に正しく固定できるか。
着脱・固定のしやすさ
車への取り付けやすさ、子どもの乗せ降ろしやベルトの締めやすさ。
重 量
シート自体の重さ(特に持ち運ぶキャリータイプの場合、重すぎないか)。
快適性・エルゴノミクス(Ergonomics)—— 配点の 10%
子どもが快適に、かつ正しい姿勢で座り続けられるかを検証します。
居住スペース
子どもにとって窮屈すぎず、かつ適切なサポートがあるか。
車内スペース
チャイルドシートを設置した際、車の中でどれくらい場所をとるか(隣の席の邪魔にならないか)。
座り心地
クッションの厚み、足元のスペース、外の景色の見やすさなど。
有害物質(Chemicals)—— 評価の「除外」または「大幅減点」項目
肌に触れるシート生地やベルトなどの素材に、難燃剤、可塑剤(フタル酸エステル)、重金属、多環芳香族炭化水素(PAH)などの有害な化学物質が含まれていないかを徹底的にラボで分析します。
この項目は配点%には含まれませんが、有害物質が一定基準を超えて検出された場合、他の項目(安全性など)がどれだけ最高得点であっても、総合評価は強制的に「不合格(Deficient / 不可)」になります。
日本で購入可能なADACテストで満足以上の評価を獲得している製品
・AXKID One+3(Swedish Plusテストにも合格)
・BRITAX DUALFIX PRO(前モデルDUALFIX i-SIZEにて)
・BRITAX DUALFIX PLUS
・MAXI-COSI PEARL360PRO with FAMILYFIX 360 PRO
・MAXI-COSI MICA 360 PRO
・MAXI-COSI MICA PRO ECO i-SIZE
・MAXI-COSI STONE(同系機種MICA ECO i-SIZEにて)
・MAXI-COSI EMERALD 360 PRO
・CYBEX SIRONA T i-SIZE with T BASE
・CYBEX SIRONA G i-SIZE with G BASE
・CYBEX SIRONA Gi i-SIZE
・JOIE i-ARC360(同系機種i-SPIN360にて)
・JOIE i-PIVOT360
・JOIE i-Harbour with i-Base Encore
・NUNA PRUU
まとめ
ドイツ自動車連盟による、欧州基準を遥かに超える総合的に厳しい辛口テスト。
一言でいうと: 「車のガチ衝突に耐え、毒性もなく、親がミスなく使えるか」を徹底的にあぶり出すテストです。このテストで満足以上のスコアを獲得した製品は、高い安全性が認められているといえます。
3.日本・チャイルドシートアセスメント
国交省とNASVAが時速55km/hで検証する日本の指標。
国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)が、日本国内で販売されている主要なチャイルドシートを対象に毎年実施している公的な安全性能評価です。
試験は大きく分けて、衝突時の安全性を測る「① 安全性能試験」と、日常の使いやすさを評価する「② 使用性評価試験」の2つで構成されています。
安全性能試験(衝突テスト)
実際の衝突事故を想定し、試験用の台車(スレッド)にチャイルドシートとダミー人形(センサー内蔵)を乗せて衝撃を加えます。
前面衝突試験(時速55km/h)
ここがポイント▶
法律で定められた安全基準(時速50km/h)よりもさらに厳しい時速55km/hの速度で衝突(急減速)させます。
測定内容▶
衝突した瞬間に、ダミー人形の頭部や胸部が受けた衝撃(加速度)や、前方への飛び出し量を測定します。また、チャイルドシートの本体、バックル、取付金具(ISOFIXコネクターなど)が破損・破断しないかも厳しくチェックされます。
⚠ 側面衝突試験について
日本のチャイルドシートアセスメント独自のプログラムとしては、現在も側面衝突試験は実施していません。(日本で側面衝突の試験機が無いため)
ただし、アセスメントの評価対象となるシートの多くは最新の国連基準(R129)をベースに作られているため、製品自体は「R129」の認可時に(時速24km/hの)側面衝突はクリアしています。
安全性能の評価ランク
前面衝突時のデータをもとに、子どもの体へのダメージが少ない順から
「優(★★★★)」「良(★★★)」「普通(★★)」「推奨しない(★)」の4段階で格付けされます。
良評価以上の製品
・APRICA クルリラエックスシリーズ(ビッテエックス含む)
・APRICA フラディアグロウ/フラディアプラス
・COMBI THE Sシリーズ
・COMBI クルムーヴロング
・COMBI クルムーヴアドバンス
・AILEBEBE クルットスライド
・AILEBEBE クルットR
使用性評価試験(使いやすさのチェック)
どれだけ衝突安全性が高いシートでも、車への取り付け方や子どもへのベルトの締め方を間違える(誤使用=ミスユース)と、本来の性能を発揮できません。そのため、以下の項目を実際に細かく採点します。
車両への取り付け性
説明書を見ながら、一般のユーザーが迷わず確実に車に固定できるか。ISOFIXの差し込みやすさや、サポートレッグ(床に突っ張る足)の調節しやすさなどを評価。
子どもの着座性
赤ちゃんを乗せるときに、肩ベルトの高さ調節やバックルの固定、ベルトの締め付けがスムーズに行えるか。
取扱説明書・警告表示の分かりやすさ
イラストや文字が直感的で、誤った使い方を未然に防げる工夫が本体の警告シールや説明書にされているか。
使用性の評価ランク
有識者や子育て中の一般モニターらのチェックを経て、25点満点で採点されます。
まとめ(アセスメントの意義)
海外の超過酷テスト(ADACの64km/hなど)に比べると時速はやや劣り、側面衝突テストもありません。また使いやすさを示す使用性の評価については、個人的には若干甘い感は否めませんが。。。。
しかし、R129基準(50km/h)より一歩厳しい『時速55km/h』で正面衝突をテストを実施しているので、国内で販売される製品の中から比較検討する際には、判断材料のひとつになるでしょう。
おわりに
チャイルドシート選びで大切なのは、
「安全基準に合格しているか」だけを見るのではなく、その先にある安全性能まで確認することです。
衝撃を受け止めるべきは、子どもではなくチャイルドシートです。
子どもの身体は大人の縮小版ではありません。
特に幼い子どもは頭が重く、首の骨や筋肉も未発達です。
だからこそ、衝突時の力を子ども自身が受けるのではなく、チャイルドシート全体で受け止める「後ろ向き乗車」には大きな意味があります。
安全性を最優先に考えるのであれば、製品のデザインや価格だけでなく、どのような試験で評価されているかにもぜひ注目してみてください。
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